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2022.12.12

【60代から始める相続対策】②財産分与で考えること

相続対策コンサル

このブログは、50~70代の方に向けて、
相続対策をテーマにお伝えしています。
非常に言いづらいことではありますが、
始まりがある以上、終わりの時は必ずやってきます。
そして、誰もが初体験となります。
だからこそ、しっかり準備して挑む必要があります。
そのために、注意すべき点について、お伝えしています。
前回は、行政書士、相続コンサルタントとしての立場から、
遺言書についてお話ししました。
タイトル:【60代から始める相続対策】①初手は遺言から
リンク:https://consulting-koriyama.jp/blog/souzoku/786/

今回は、税理士、相続コンサルタントの立場から、財産を分ける上での注意点を
2点、お伝えしていきます。
1 相続する人の事情
2 相続財産のコスト

1 相続する人の事情

相続する人というのは、相続財産をもらう方のことをいいます。
これは大きく2つに分かれます。
(1)配偶者(伴侶)
(2)配偶者以外

(1)配偶者(伴侶)

配偶者は大きく2つのテーマがあります。
とくに、男性は以下の価値基準を明記していただきたいと思います。
① 配偶者の老後は2回ある
② 子供と孫対策

① 配偶者の老後は2回ある

遺された配偶者にとって、老後は2つあります。
1つめの老後
65歳以降の暮らしをいいます。
お仕事等を定年退職されるようなケースをいいます。
2つめの老後
配偶者が亡くなった後の暮らしをいいます。
これが、「配偶者の老後は2回ある」の正体です。
ここからが、配偶者にとって第2の老後のスタートになります。
つまり、貴方を見送ってからの日々が、新たな始まりになるわけです。
特に、夫が亡くなり、妻が第2の老後を迎えるケースが多いです。
根拠は2つあります。
Ⅰ 日本人の平均年齢
Ⅱ 夫婦の年の差

です。

Ⅰ 日本人の平均年齢

厚生労働省が発表した令和元年度の平均寿命ですが、男性は81歳、女性は87歳です。
平均値で見ても、女性は男性よりも6年間長生きするという点があります。

Ⅱ 夫婦の年の差

現在の60歳代~70歳代の夫婦の年の差平均で、約3歳です。
厚生労働省が発表した昭和55年の平均婚姻年齢は、
・男性28歳
・女性25歳

です。
つまり、平均値で見ても女性は男性より3歳年齢が下ということです。
女性は男性より平均寿命が6年多い、しかも夫より配偶者が3年年下ということであれば、あわせて9年間の差があります。
ご主人が旅立ってから自分が旅立つまで約10年間時間があるということですし、中にはそれ以上の方もいらっしゃいます。
ですから、配偶者にとって第二の老後という言い方は、決して大げさではありません。
ご主人にとっては人生の終着点であるけども、
配偶者にとっては、
パートナーがいない状態で迎える新しい人生の門出ということを、認識する必要があります。
そのうえで、財産配分を考える必要があります。

② 孫と子供対策

財産を持っていると、自分が亡くなった後、配偶者の下に孫が来ます。
子供夫婦が大切にしてくれます。
遺産を全て子供にあげてしまうと、孫が来ません。
大切にしてもらえないかもしれません。
寂しくなって子供夫婦の家に行こうとしても、何かしら理由や手土産つけないと
おいそれと子供や孫に会えない可能性もあります。
病院、買い物の送迎、お願いすることになるかもしれません。
財産がないと、お礼をすることもできません。
例えば、生前対策に自宅土地建物の名義を子供名義にするというものがあります。
確かに、次世代を見据えた配慮です。
その反面、配偶者としては居場所が心配になってしまいますから、
そこは所有権含め一考の余地があります。
ここで、配偶者居住権の話が出てくるかもしれませんが、
私個人的な意見になりますが、お勧めいたしません。
理由はお金も手間もかかることが挙げられます。
自分の相続の時にも労力やお金がかかるうえ、
配偶者が亡くなった後の手続きにも労力やお金がかかります。
ダブルでお金と労力がかかるので、個人的にはお勧めしておりません。
また、配偶者によっては家を守ることが枷になる場合もあります。
その場合、現金で遺産を残すほうが良いこともあり得ます。
一番は、本人に聞くことです。
言い方としては、初手で「大事な話がある」と宣言する必要があります。
これを会話でファウンデーションといいますが、
相手と自分のスイッチを入れるために、場所の空気を作る。
そのうえで、本題に入ることが、手順として有効です。
その上で、土地建物を売却し、現金として残すこともできること、
今なら、売ったお金でサービス付き介護住宅に入ることもできるし、
別のところに移り住むこともできることなどを伝えます。
そのうえで、どうしたいのかを聞くことになります。
これは以下の3段階で考えることができます。
Ⅰ 今後の夫婦生活
Ⅱ 自分がいなくなった後の生活
Ⅲ 配偶者のエンディング

をどうしたいかにまで思いを巡らせながら、
話し合うということは、非常に重要なことです。
これから老後を迎えるご夫婦も、既に老後を迎えているご夫婦も、
配偶者の第二の老後、考えてあげてください。
配偶者の相続財産を決める上で、基準を2つご紹介しました。
① 配偶者の老後は2回ある
② 子供と孫対策

でした。これらのことをしっかり世のご主人方は理解していただいて
相続財産を考えることがとても大事です。

(2)配偶者以外

配偶者以外への相続の話です。
子供や孫、兄弟、親族などが当てはまります。
土地建物のような不動産をお持ちの家庭が該当します。
例えば、2人の息子がいらっしゃって長男には土地建物を相続させ、次男には現金を相続させるというケース、よくあります。
ですがこのケースでは、その土地と建物は本当に必要かということを考える必要があります。
留意していただきたいのは、価値観は、世代によって違うということです。
土地と建物に価値を見出す方は、バブル期を経験した50代くらいまでの可能性があります。
バブルを知らない世代、ましてや失われた30年を生きた40代以下の世代にとっては、
土地建物に価値があると思っているかどうか、疑問です。
さらに、
・自宅を既に所持
・首都圏など離れたところで生活
・地元に戻る意思がない
・賃貸派

の場合、計画は根底から崩れます。
こういった方にとって相続財産の土地建物は、お荷物でしかありません。
先ほどの例だと長男より、次男が土地建物を欲しがるというケースもあります。
こうなってしまうと、相続のとき、ミスマッチ、兄弟間での争いの火種になります。
そしてその火種は大抵は最悪な方向、調停や訴訟まで発展する可能性があります。
なぜなら、子供たちを諫めることができる唯一の存在は、あなただけだったからです。
その存在が不在である以上、行くところまで行くしかなくなります。
現に、日本の相続訴訟約12,000件のうち、
75%が遺産総額5,000万円以下のご家庭です。
主な財産は実家の土地建物、といった家庭です。
ですから、以下の点を確認する必要があります。
・相続財産が必要な理由
・相続財産の用途

本音では、「現金が一番」というケースにもなりがちですから、
ソフトに聞いてみることがお勧めです。
ここまで、相続財産を貰う人の事情を考えるということについて、お話しました。
大きく2つありました。
(1)配偶者(伴侶)
  ・第二の老後がある
  ・第二の老後の期間は約10年以上続く
(2)配偶者以外
  ・子供でも価値観が異なる

共に大事なことは、相手の事情を考えるということです。
そして、最善手は、直接本人に聞くことです。

2 相続財産のコスト

ここからは、生前対策、家族内で検討することの2点目に移っていきます。
相続財産のコストについて、大きく3つのテーマでお話ししていきます
(1)相続税の支払い
(2)不動産の支払い
(3)法要の支払い

(1)相続税の支払い

相続税の仕組みですが、もらった財産に応じて税金の多寡が決まります。
納期限:亡くなってから10カ月以内
納め方:現金払い(基本)
モノで納付することもできなくはないですが、ハードルは高いです。
例えば
・山
・三角形の土地
・骨とう品

こういったものは、税務署からのOKは出ません。
やはり、現金を準備する必要があります。
したがって、遺産を不動産や株式だけにしてしまうことはリスクが高くなります。
相続する人にとって、大きな臨時出費は家計を圧迫しますし、
税金を払うために土地建物や株を売ることになりかねません。
モノを相続させる場合、特に税金に注意してあげてください

(2)不動産の支払い

不動産の維持費の支払いについて取り上げます。
土地建物を相続させるにあたっては、
その後のお金まで考慮する必要があります。
土地建物の名義変更には、登記手続きが必要です。
自分で出来ないこともないですが、
万全を期するためにはプロ(司法書士等)に依頼するのが一番です。
ただし、費用(数十万円)かかります。
それだけでなく、不動産は維持修繕が必要です。
固定資産税は毎年かかりますし、建物なら劣化していきますから修繕も必要です。
掃除や雪かきも必要になるかもしれません。
賃貸物件なら、上記に加えて、
毎年の確定申告
空室のリスク
等と常に直面する必要があります。
土地建物を相続させるとして、
その後には必ず維持費用のための
・お金
・労力

が必要になります。
不動産を相続財産にするときは、その出費まで考慮してあげるとよいかもしれません。

(3)法要の支払い

法要にかかる支払があります。
特に、亡くなったときの喪主というのは、大きなターニングポイントになります。
一般的に、喪主は長男や配偶者で決まることが多いですが、役割は葬儀だけにとどまりません。
まず、葬儀費用ですが、100万円~300万円かかります。
もちろん香典で相殺できるとしても、一旦そのお金の支払いや手配が必要です。
そうなると、喪主がとりまとめることになります。
宗派にもよりますが、葬儀のほか、法要にかかる費用があります。
戒名代、お墓といったものがあります。
近所の方にお手伝いしてもらったときは、その後のご挨拶と心づけも必要です。
法要に関して、上記までは気づきますが、ここからが見落としがちなポイントです。
それは、何十年単位で続く維持管理費用です。
一周忌、三周忌、7周忌、13、23、27、33回忌といった法要があります。
その間に発生するお寺とのお付き合い お墓の維持管理もあります。
当然お金も労力もかかります。
最初に戻りますが、きっかけは、喪主を決めたところに始まります。
簡単に喪主を長男と決めてしまうと、親戚の間で既成事実として確定します。
つまり、この先の出費を負担することが確定してしまいます。
もし、長男の方が喪主で、妻がいた場合、大変なことになります。
妻のストレスがどんどん溜まります。
3回忌のとき、弟夫婦は口出しはするのに、夫婦で2万円しか包んでない!
とか、
7回忌の時は花ももってこなかった!
などと燻ぶり続けます。
13回忌以降になったら、
私手伝わないから!
となることもあり得ます。
ですから、喪主を指名するのでしたら、相続財産として加味する必要があります。
相続とは、財産だけのものではありません。
縁を引き継ぎます。
役割も苦労もしがらみも、全てひきつぐことになります。
目に見えないものだからこそ、
受け継いだ人たちが何をして、
どんな役割を背負っていくのか感じて、加味すると、
後世の礎を築けると思います。
ここまで、相続財産のコストについて、3つのテーマでお話してきました。
(1)相続税の支払い
(2)不動産の支払い
(3)法要の支払い
一時的な出費もあれば、長年に渡って支払う費用もあります。
両面から考えることができれば、とても有効な相続対策ができるようになります。

まとめ

ここまで、財産を分ける上での注意点について、大きく2点、お伝えしてきました。
1 相続する人の事情
2 相続財産のコスト

相続する人の事情は、
・配偶者
・配偶者以外
のケースでそれぞれ考える点があるということ、
相続後のコストとしては、
・相続手続き時にかかる費用
・未来にわたって支払う費用

があります。
相続とは、何も財産だけに限ったことではありません。
縁を引き継ぎます。
だからこそ、相続する人たちに直接聞くということが、非常に大事なポイントです。

おわりに

遺言というのは、自分が人生で築いてきた証を次の世代につなぐ、いわばバトンと思っています。
また、後へ引き継ぐ者たちに、自分の生き方を示す最後のメッセージとも思います。
始まりがある以上、誰にでも終わりは訪れます。
ですが、遺された人にとっては、新たな人生の門出でもあります。
遺される人の生き方に想いを馳せて寄り添うこと。
これが、税理士、相続コンサルタントとしてお勧めする、生前対策です。

記事執筆


株式会社トライアンドエラー 税理士 代表取締役 遠藤 光寛(えんどう みつひろ)
1981年生まれ 山形県出身
2000年仙台国税局採用 福島県内税務署を中心に18年間勤務。
2018年税理士事務所を設立。国税時代から法人個人含め延べ約30万件超の財務経営コンサルティングに携わる。
現在は株式会社トライアンドエラー 税理士兼代表取締役社長として、福島県郡山市の企業を中心に財務経営コンサルタントとして活動中。

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