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株式会社ヌカザワ代表取締役糠澤 洋子

事業承継に係る課題解決から
諸手続きまで安定経営を支援

遠藤光寛税理士事務所遠藤 光寛

糠澤 まず会社について説明しますと、明治33年(1900年)に創業し、3年前までは高度医療機器や医薬品の販売、メンテナンスなどの業務を取り扱っていました。主人は3代目社長で、2018年当時は77歳でしたが、80歳までは会社経営を続けようと語っていました。ところがスキルス性胃がんに罹ってステージ4の段階まで進行し、実質的な経営ができなくなりました。役所の許可証を持っていないと営業できない業種なので、社長が代わると資格を喪失してしまいます。息子は歯科医院を経営していましたので、後継者に据えることもできず……。そのような事情が重なって、会社を閉じる準備を始めました。その頃、息子が遠藤先生とお付き合いするようになり、歯科医院の会計業務や経営相談などをお願いしていました。息子に会社閉鎖について相談したところ、「いい先生がいるから」と紹介されたのが遠藤先生でした。
遠藤 初めてお会いしたのは2018年11月頃だったと記憶しています。
糠澤 118年も続いた会社でしたので、どのように閉じたらいいか、とても悩んでいました。処理が難しい事案もいろいろ抱えていて、私ひとりではどうしようもありませんでした。それまでお願いしていた会計士さんはご高齢なのでお願いするのも難しいし、そんな時に遠藤先生とお知り合いになれたのは、幸運でした。法的にキチンと会社を整理するために、まずは様々な事案を解決することから相談しました。未回収になっている売掛金や借入金の状況など、会社の状況を包み隠さずお話しして、帳簿や資料、データをすべてチェックしていただきました。遠藤先生に現状をお話ししただけで、穏やかな気持ちになりました。ご相談のやりとりでもまったく不安を覚えないし、途方に暮れていた私にとって、まさに救世主でした。
−差し支えなければ、会社整理の障害になっていた事案を具体的に伺ってもよろしいですか?
糠澤 会社を閉鎖するにあたって、大きな問題が2つありました。1つは回収不能な状態なっていた売掛金が相当額になっていたこと。もう1つは本業とは別に、健康器具やミネラルウォーター機器など、保証金を積んで営業・販売するライセンスビジネスに携わっていた時期があり、その保証金が取り戻せなくなっていたことでした。その他にも解雇することになる従業員のこと、歯科医院に販売した高度医療機器のメンテナンスを引き継いでくれる受入先のこと、在庫品の処分など、遠藤先生に相談することが山積していました。
遠藤 このようなデリケートなご相談の場合は、すべての情報を開示していただくことが前提となります。そのためにはお客様に信頼していただかないと、必要な書類やデータを出していただけませんので、言葉でいろいろ説明するよりも、まずは行動を見ていただこうと考えました。ご相談いただきました会社整理についても、「どのような状態にすることが、糠澤社長にとって一番良いのか」についてお伺いを立ててから、専門家としてお応えできる最大限のことは何かを考え、最大限を超えるレベルまでお手伝いするための手段を実行しました。税法上も難しい問題がありましたので、その分野で国内トップクラスの税理士の先生方の門戸を叩いてご指導いただいたり、仙台市の東北税理士会にも解決策を見い出すための相談に伺いました。そのようにして売掛金や保証金を回収するための法律的な根拠を積み重ね、ガチガチに理論武装して交渉の場に臨めるよう準備しました。法律論という正攻法に加え、絡め手の策として未払いの会社の関係先などを探して、刑事ドラマの聞き込みのように様々な情報を収集しました。
糠澤 未回収になっていたのはライセンスビジネスに関わるものだけじゃなくて、歯科医師や歯科技工士に販売した機器の代金が回収できなかった例もありました。1990年前後のバブルの頃の取引分です。旧いものだと40年前の焦げ付きもありました。請求書は送り続けていましたが、相手先からは“なしのつぶて”でした。景気が良かった頃は銀行もドンドンお金を貸してくれましたし、主人も50歳前後でしたから事業拡大に積極的で、化粧品の開発・商品化などにも取り組みました。ただし小売業のノウハウが無いので大量の在庫を抱えてしまったり。主人は事業を多角化しましたが、「労多くして益少なし」という結果でした。
遠藤 会社を清算する際は売掛金や保証金を回収するか、回収不能の根拠を示して損金計上しなければなりません。準備万端整えた上で、未払いになっていた会社にはすべて交渉に出向きました。かつて税務署に勤務していた頃、未払の税金を取り立てる仕事も行っていましたので、ちょっと懐かしい気分になりました。(笑)
糠澤 廃業してしまった会社、社長が亡くなっていた会社も結構ありましたね。
遠藤 結果的に売掛金の回収はできませんでしたが、相手先の状況は詳細に確認できました。税法上は簡単に回収を断念して損金計上することはできないルールになっています。仮に倒産していても、経営者が存命であれば回収できる可能性はゼロではありませんので、債権として帳簿に残さなくてはなりません。そこで税務署との交渉材料となるように相手先の会社の状況をつぶさに取材したり、事務所の写真を撮ったり、具体的に接触できた場合は「いつ、どこで、誰と、どんな話をしたか」という事実を資料にまとめました。損金が増えれば法人税は減りますから、そこにポイントを絞って行動しました。
糠澤 遠藤先生には徹底的に相手先を追いかけていただいて、訪問先の隣り近所の人に不審者扱いされたり。(笑)大変なご苦労をおかけして、会社を閉じるのはつくづく大変なことだと思いました。遠藤先生がいなければ、できなかったことです。
遠藤 ありがとうございます。(笑)
−その後、会社は清算ではなく存続する道を選ばれましたが、経緯をお話しいただけますか?
糠澤 売掛金の状況確認と並行して、2018年12月から2019年春にかけて一時退院した主人が、お客様を引き継いでくれるディーラーを見つけてお願いしたり、仕入先の買掛金もすべて清算しました。医薬品などの在庫は残さないように指示を出して、歯科医師や歯科技工士の皆さんに値引販売しました。高度医療機器や医薬品の販売、メンテナンスなど、元々の業務の整理・処分を終えて、店舗を閉じたのが2019年3月31日です。その頃、主人は一時的に元気になって、従業員に事細かに指示を出していました。4月に従業員とお別れ会を行って、主人は仕事を離れました。その半年後、2019年10月に亡くなりました。
遠藤 会社を清算することが当初の相談内容でしたが、不採算だった歯科医療機器等の部門を整理して固定経費を大幅に圧縮できました。残る自社ビルにはテナントが入居しており、不動産部門は採算ベースに乗っていました。
糠澤 それで不動産管理に特化して会社を存続させることになり、私が4代目の経営者になりました。
遠藤 会社を引き継ぐ準備の段階から様々なお手伝いをしました。取引先への連絡や説明、加入団体を脱会する手続き,許認可事業の免許の返納などです。また銀行の借入を長期返済に切り替えるために、返済計画の書類を作成して交渉も行いました。借入した時点では歯科商材の販売という業態に対する融資で、事業規模が大きかったので、それに応じた返済額が設定されていました。それが不動産管理のみになると収入に減るので、月額を抑えて返済年数を長期化する必要がありました。
会社を引き継ぐ準備の段階から様々なお手伝いをしました。取引先への連絡や説明、加入団体を脱会する手続き,許認可事業の免許の返納などです。また銀行の借入を長期返済に切り替えるために、返済計画の書類を作成して交渉も行いました。借入した時点では歯科商材の販売という業態に対する融資で、事業規模が大きかったので、それに応じた返済額が設定されていました。それが不動産管理のみになると収入に減るので、月額を抑えて返済年数を長期化する必要がありました。
糠澤 私が同席して交渉したときに、銀行から「ヌカザワさんは長い歴史があるなかで、銀行に迷惑をかけたことは1度もありません。だから引き続き応援します」と言っていただきました。そういう回答をいただけたのも、遠藤先生が何度も何度も銀行に足を運んで納得できるように事情を説明し、返済計画をご理解いただけたからだと思っています。
遠藤 不動産管理の会社に移行して2年以上になりますが、月次決算の仕事を承っています。請求書や領収証、現金出納帳などをお預かりして月毎に試算表を作成し、過去と現在のデータに基づいて将来展望をご提示ています。また補助金や助成金の情報を探して、会社の将来にとってプラスになると思われるものをご提案しています。
糠澤 遠藤先生は、私が考えも付かないようなことをご提案くださいますので、とても助かっています。しかもフットワークが軽いんです。相談事があると、私の話をトコトン聞いた上ですぐに答えが出てきます。「キチンと利益を出して納税する」という正しい経営の在り方も指導していただいて、安全・安心な会社経営を実現できています。
遠藤 お褒めの言葉を頂戴しまして、恐縮です。
糠澤 私も高齢ですから、もしもの時に誰に跡を継いで貰うか、思案中です。以前と違ってスッキリとスリムな会社になりましたから、兼務でも経営できます。候補者は複数いますが、経営状況をオープンにしていますので、スムーズに移行できると思います。遠藤先生にはずっとお世話になりたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。
遠藤 私も精一杯お手伝いさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
−ありがとうございました

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