税理士が見た「難しいお客様」の共通点とは?

税理士との付き合い方、誤解していませんか?

こんにちは。福島県郡山市で税理士事務所を運営している、税理士の遠藤光寛です。 私は国税に18年間勤め、開業して7年目になります。現在は税務顧問に加えて、企業の「お金が残る仕組みづくり」や「社員を育てる研修」を通じて、福島の中小企業を支援しています。

税理士として、多くの経営者の方とお会いし、数字と向き合ってきました。 その中で、「この方は難しいな」と感じるケースには、いくつか共通点があります。

単に性格が合わないとか、考え方が違うということではありません。 もっと根本的に「社会の見方」「商売の捉え方」「お金に対する感覚」がズレている。 そんなとき、支援の方向性自体が定まらなくなります。

今回は、そうした“ズレ”の事例をもとに、「なぜその人は経営がうまくいかないのか?」を掘り下げてみたいと思います。


1. お金をかけずに何とかしようとする(=商売経験の不足)

これは最も多く見られる特徴です。

たとえば「このチラシ、1万円以内で作ってもらえますか?」 「広告にお金をかける意味がわからない」 「補助金で何とかやりたい」

──お気持ちは分かります。 でも、商売とは「お金を使って、それ以上に稼ぐ」行為です。 何も投資せず、何も失わず、成果だけ得ようとするのは、商売の原則に反しています。

こうした方は、支援を受ける際も「いくらでやってくれるのか?」ばかりを気にします。 当然、成果は限定的になります。


2. 自分の業界ルールを押し付けてしまう(=視野の狭さ)

「うちの業界ではこうなんです」 「この業界の常識は○○です」

たしかに、業界ごとの商習慣や文化はあります。 ただ、財務・経営の視点では、数字はすべてを“横断”しています。

売上、利益、現預金、借入金、繰越利益、キャッシュフローは、どの業界でも共通の言語です。 ところが、業界の常識にとらわれすぎて、数字を見ようとしない経営者もいます。

専門職出身の方や職人肌の方に多いパターンです。 「数字で語る」意識がないと、経営は属人的で再現性のないものになってしまいます。


3. 学歴や過去の肩書きに固執してしまう(=過去の栄光の延長)

「私、○○大学出てるんです」 「前職は上場企業の管理職でした」

これも少なくありません。 もちろん、そのご経験は素晴らしい財産です。 ただ、ビジネスの世界では「今、何を稼いでいるか」がすべてです。

学歴が高かろうと、立派な経歴があろうと、 ・会社が赤字である ・キャッシュフローが回っていない ・数字が全く積み上がっていない のであれば、それは“成果を出せていない状態”です。

数字は冷静で、公平です。 「がんばった」「人の役に立っている」だけでは続けられません。


4. 「話を聞いてもらって当然」という意識(=時間の価値に鈍感)

これは特に教職出身や公的機関からの独立組に多い印象です。

「とりあえず話だけでも聞いてもらえませんか?」 「相談だけなら無料でいいですよね?」

でも、私たちは“時間”で仕事をしています。 30分話すということは、その分、他の顧問先の方に割く時間を削っているということ。

きちんと有料相談にすることで、 ・聞く側も集中する ・話す側も準備して臨む ・両者にとって成果のある対話になる

そんな構造をつくることが、経営者としての成熟です。


5. 黒字でもキャッシュがない=お金の使い方に問題あり

最後に、数字に現れる典型例です。

「黒字なのにお金が残っていない」 「頑張っているのに資金繰りが苦しい」

これは税理士として、最も危機感を感じるパターンです。 こうした会社は、たいていお金の使い方に“クセ”があります。

・分不相応な設備投資 ・社長のプライベート支出 ・スタッフの採用計画の見誤り

キャッシュフローを見て、意思決定するという習慣がなければ、いくら黒字でも倒れてしまいます。


「難しい人=悪い人」ではない

誤解しないでいただきたいのは、「難しい」と感じるお客様が悪いわけではありません。 むしろ、真面目で、誠実で、丁寧な方が多い。

ただ、そのままでは「会社が続かない」「成長しない」ことも事実です。

だからこそ、税理士の立場として「それでは続かないですよ」と伝える役割がある。 私が日々意識しているのは、そうした“耳の痛い話”でも、誠実に、建設的に伝えることです。


まとめ:経営の視点を持つために

経営は、想いと同じくらい「視点」が大切です。

「お金をかけずに何とかしたい」ではなく、 「お金をどう使って成果を出すか?」

「人柄や実績がある」ではなく、 「今、何を数字で証明できるか?」

こうした視点がなければ、どれだけ真面目に努力していても、 会社としては苦しくなってしまいます。

逆に、この“視点”さえあれば、どんなに小さな会社でも着実に成長できます。 私は、そうした企業に「視点」を届けられる税理士でありたいと考えています。よう、まずは自分から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。


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「なんとなく気になる」── その感覚が、新しいご縁の始まりかもしれません。 気になった「今」こそ、少し立ち止まって考えてみるチャンスです。

郡山駅前(郡山市の事務所から)

記事執筆者

遠藤 光寛(えんどう みつひろ) 税理士・行政書士・FP1級

18年間の国税職員経験を経て、2018年に独立。 クラウド会計や医療法人支援を専門としながら、税務申告・記帳代行にとどまらず、人材育成・業務の仕組み化・データに基づく経営戦略立案、実行を一貫して提供している。

2020年に株式会社遠藤会計を設立し、福島県郡山市を拠点に、企業の経営基盤を支える伴走型の税理士事務所を運営。 以下のような、「現場と数字」の両面からの改善支援を強みとする。 ・債務超過企業の黒字化 ・離職率の高い組織の再構築 ・マネジメントに悩む管理職の再育成

支援の根底にあるのは、「人は財」という信念。 税務の専門家としての正確さに加え、人と組織の成長をともに考える姿勢に信頼を寄せる顧問先も多い。 すべての顧問先に税理士本人が対応し、経営者の課題に誠実に寄り添う姿勢を大切にしている。

保有資格

  • 税理士
  • 行政書士
  • ファイナンシャル・プランニング技能士1級
  • CFP®認定者
  • 認定マスターコーチ
  • 経営支援責任者
  • 方眼ノートトレーナー
  • クラウド会計ソフトfreee会計上級エキスパート
  • クラウド会計ソフトfreee人事労務エキスパート
  • 第二種情報処理技術者
  • 初級システムアドミニストレータ
  • Microsoft VBA Excel スタンダード

認定・許可

  • 福島県 甲種防火管理者
  • 経済産業省 経営革新等支援機関
  • 厚生労働省 有料職業紹介事業所
  • 福島県公安委員会 古物商許可
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1981年8月4日生まれ 株式会社遠藤会計 代表取締役/遠藤光寛税理士事務所代表 税務職歴18年(仙台国税局)、2018年に税理士事務所開業。2020年に法人設立

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