雨乞い経営から、ダム式経営へ。―医院に必要な「ためる力」

1. 雨を待つ経営になっていませんか?
「設備変えなきゃいけないんだけど、どうしようかなぁ」
「人手が足りないけど人件費がなぁ」
そんな声を、医院の経営相談でよく耳にします。
売上という雨が降ることを祈りながら、
入ってきた瞬間にすべて流してしまう。
このような経営を、私は「雨乞い経営」と呼んでいます。
雨乞い経営では、次の雨がいつ降るか分からないため、
心の余裕がなくなり、判断がすべて短期的になります。
入金が少し遅れただけで不安になり、
設備投資や人件費の支払いにも迷いが生じる。
まるで、天候に経営を委ねているような状態です。
2. 「ためて流す」ダム式経営の発想
松下幸之助氏はこう言いました。
「ダムを作ろうと思わなければあきまへんなぁ」
経営も同じです。
お金をためておくことで、急な支出や不況にも耐えられる。
つまり、経営の安定とは、キャッシュをためる力なのです。
ダムは、雨が多い時期に水をため、
必要な時に少しずつ放流することで下流を潤します。
医院経営も同じく、診療報酬のタイムラグを見越して
常に下流(経費・人件費・設備投資)を安定させておく必要があります。
3. 売上10億円までは“溜め池”で十分
とはいえ、すべての医院が大規模なダムを作る必要はありません。
売上10億円未満の規模であれば、
溜め池くらいの感覚で十分です。
緻密なシミュレーションよりも、
「常に下流を枯らさない」という考え方のほうが大切です。
ため池は小さくても、地域の田畑を潤すことができます。
要は、ためようとする姿勢があるかどうかです。
何も意識しなければ、水は自然と流れ出てしまいます。
4. 院長を惑わせる“流出の誘惑”
医院の経営をしていると、さまざまな提案が舞い込みます。
保険、投資、不動産、高級車、住宅、ブランド品……。
「せっかくだから」と思って資金を動かすうちに、
本業に回すべきお金がどんどん外へ出ていきます。
しかし、院長が本来集中すべきは“医療”そのものです。
地域医療を支え、患者さんとスタッフの信頼を築くこと。
それが医院の原点であり、最大の投資対象です。
だからこそ、まずは医院の中に“ため池”をつくる。
水(資金)をためることで、
どんな提案があっても冷静に判断できる土台が生まれます。
5. 雨を待つ経営と、ダムを持つ経営の違い
雨乞い経営では、入ってきたお金をそのまま使うため、
毎月の資金繰りに追われ、判断の基準が“今月”に偏ります。
一方でダム式経営は、ためてから使う。
だからこそ、未来を見据えて決断できる。
お金の余裕がある医院は、心にも余裕があります。
スタッフへの給与も投資も、落ち着いて判断できる。
経営とは、数字の勝負ではなく、余裕の設計なのです。
6. まずは“ためる姿勢”を取り戻す
資金繰りの巧拙よりも、ためる意志が大切です。
医院にとっての溜め池とは、
「日々の売上の中から、少しずつでも蓄える」という意識そのもの。
雨を祈るより、ため池をつくる。
それが、医院を守り、地域を支える第一歩です。
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記事執筆者
遠藤 光寛(えんどう みつひろ)
税理士・株式会社遠藤会計 代表
二代目経営者を中心に、
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18年間の国税職員経験を経て独立。
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